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2016/12/09

さび止め塗布対象物の前処理・洗浄方法

野崎正剛
ブログ

1.洗浄の目的

どんな優秀な防錆方法を用いる場合でも、その前に確実な方法によって十分洗浄するということが極めて大切であります。何故ならどのような防錆方法を用いる場合でも、錆止め剤を適用しようとする金属面に汚物、その他の異物の残りが存在したのではすくなともその箇所だけは防錆することが出来ないからです。またたとえ洗浄してもその方法が適正でないと後から行われている錆止め処理のすべてが無効に帰してしまう恐れがあります。したがって錆止め剤の下にはいかなる種類の残滓でも存在させてはなりません。

2.付着汚物の種類

金属面に存在する汚物というものにもいろいろな種類があります。その代表的なものは製作中に使用された色々な材料の残滓(Residues)指紋及び錆が主体となります。これらはいずれもその物品の構成には関係のない物質である場合が多いです。またすべての物品は製作時から使用者に渡るまでに色々な汚物が付着する可能性があります。これらの付着汚物はいろいろな形で金属面に悪作用します。付着物の多くは腐食性であり、またそうでないものも概ね吸湿性があり湿気を吸収して錆を起こす恐れがあります。

またある種の液体物は塗料の密着性を妨げ、ある種の固形物は防錆油膜を崩してそこから水や腐食性物質を金属面に浸入させるといったような悪作用をもたらします。着色汚物の種類はおよそ4種類に分けられ、いずれも防錆剤を適用する時は完全に除去しなくてはならないものであります。なおこの4種類の付着汚物というのは大体次のようなものであります。

 ●ブラシで擦るかバフ研磨するか機械的方法を用いなければ除去できない不溶解性物質。

例えば錆、スケール、カーボン残滓など。

●石油溶剤か水以外の溶剤で除去できるような油溶性物質。

例えばグリース、オイル、石鹸、切削油、引き抜き油など。

●水溶性無機物。

例えば熱処理塩、溶接フラックス、印づけに使われたチョーク類、指紋および汗跡など。

●軽く付いている不溶解性物質。

例えば埃、研磨類、切り粉、ヤスリ屑など、これらは水または溶剤ですすぎ洗いして落とすことが可能です。

 付着汚物を除去できると見られる洗浄方法にも色々な方式があります。問題はそのいずれを使用するかということであるが、この問題は対象物の性質なりびにその構成材料、必要とみられる洗浄度合い、付着汚物の性質、その他の条件によって決まります。

例えば油溶性物質の除去に適している洗剤では錆やスケールは除去できないことが多く、また錆やスケールの除去に良い洗剤は、その他の水溶性汚物の除去は出来ない可能性が多いです。油溶性や乳化製物質などは溶剤でもエマルジョン水溶液でも、そのいずれでも除去できます。但し油溶性汚物の他に指紋や汗などが付いているとみられる精密仕上げ品につきましては脱脂法と指紋除去法の2つの洗浄法を組み合わせて使用する必要があります。

要するにどのような洗浄法を使用するかという問題は、付着汚物の全部が除去できる方法を選定することに帰着するものであります。

 3.洗浄法法の選択

ただ1つの方法で金属面の全部または一部を正しく洗浄できるというような便利なものは存在しません。したがって対象物に応じた洗浄法を選んで、使用しなければなりません。

なぜなら洗浄法が適正でないと益より害のほうが大きいからです。

洗浄方法を選択する場合に、その決め手となるファクターは以下の項目です。

●構成材料

●表面の性質

●構造の複雑性

●除去を要する汚物の性質

●洗浄を必要とする部分又は区域

●汚れの程度

●洗浄及び装置の利用性

 4.洗浄方法の種類

●石油溶剤洗浄法

油脂および有機物の洗浄には石油系溶剤。指紋、汗など無機物を含むものの洗浄は指紋除去系さび止め油およびアルコール類が広く用いられます。

研磨面のあるものは指紋の除去だけは行った方が好ましいです。指紋の有無は肉眼では分かりにくいが、今までの経験によりますと錆の多くは指紋に原因することが多いです。

油やグリース等の汚れの除去に塩素系溶剤(トリクレン、バークレン等)の蒸気洗浄も行われますがこの場合には塩素による変色(さび)が発生しやすいため注意する必要があります。洗浄方法には浸漬方法と噴射方法があり浸漬方法の場合には通常2段洗浄を行います。洗浄によって汚れた溶剤はフィルタにかけ汚れを除去し繰り返し使用します。

●アルカリ液洗浄法

 広く用いられているのは弱アルカリ液に浸漬して洗浄する方法です。

アルカリ液を35~80℃位で加温し、洗浄した後必ず湯洗い(80℃位)を併用します。これは後日錆を起こすような除去困難な残滓を残すことのないように調整することが大切だからです。

アルミニウム及びその合金、亜鉛ダイカスト製品などは、普通のアルカリ液による洗浄は禁物です。これらの金属に対しては、インヒビタを添加した特殊の洗浄剤を使用します。但しマグネシウムだけは強いアルカリ液による洗浄が好ましいです。アルカリ液は炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、界面活性剤などを組み合わせ使用しているものが多いです。

●機械的な洗浄方法

金属表面に既にさびの発生したものやスケールその他の強固な付着物はワイヤーブラシで擦るか、機械的なさび落し、即ちサンドブラスト(砂、シリカ)法、ショットブラスト(鋼粒)法で除去します。